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弾性体の応力

コーシーは技師であることをやめなかった。1822 年、クロード=ルイ・ナヴィエは分子間の力にもとづく弾性固体の理論をアカデミーに提出し、オーギュスタン・フレネルは光を弾性媒質であるエーテルの横振動として説明していた。アカデミーで二人の同僚だったコーシーは、これらの仕事を間近で追っていた。1822 年 9 月 30 日、彼はアカデミーで、分子を必要としない新しい理論を発表した。 想像上の切り口 荷重を受けた梁、橋、柱を思い浮かべよう。内部に一点をとり、そこを通る小さな平らな切り口を想像する。その垂直な向きを $\mathbf{n}$ とする。切り口の一方の側の物質は、もう一方の側の物質を引いたり押したりする。この切り口での単位面積あたりの力はベクトル $\mathbf{t}$ で、コーシーはそれを「圧力」とよび、今日では応力ベクトルとよぶ。 このベクトルは切り口に垂直とはかぎらない。垂直な部分は垂直応力で、圧縮したり引き伸ばしたりする。平行な部分はせん断応力で、二つの面をたがいにすべらせようとする。そして同じ点のまわりで切り口を回すと、$\mathbf{t}$ も変わる。 コーシーの定理 コーシーの発見は、この依存関係が考えうるもっとも単純なもの、つまり線形だということである。数の表 $\sigma$ があって、どんな向き $\mathbf{n}$ に対しても $$\mathbf{t} = \sigma\,\mathbf{n}, \qquad \sigma = \begin{pmatrix} \sigma_{xx} & \sigma_{xy} & \sigma_{xz} \\ \sigma_{xy} & \sigma_{yy} & \sigma_{yz} \\ \sigma_{xz} & \sigma_{yz} & \sigma_{zz} \end{pmatrix}$$となる。表は対称なので、六つの数があれば、その点を通るあらゆる切り口での力がわかる。これがコーシーの応力テンソルである。 論法は四面体の論法である。三つの面が座標平面に平行で、四つめの面が $\mathbf{n}$ に垂直な、ごく小さな四面体を切り出す。面にかかる力は面積に比例し、面積は大きさの二乗で小さくなる。重さや慣性は体積に比例し、体積は大きさの三乗で小さくなる。ごく小さな四面体では面にかかる力だけが効き、それらはつり合わなければならない。各座標面の面積は、斜めの面の面積に $\mathbf{n}$ の成分のひとつを掛けたものなので、つり合いからちょうど $\mathbf{t} = \sigma\mathbf{n}$ が出てくる。 平面での例 平面では、表は三つの数からなる。メガパスカル単位で $$\sigma = \begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}$$としよう。縦の切り口では $\mathbf{n} = (1, 0)$ で、$\mathbf{t} = (3, 1)$。垂直応力 3(引張り)、せん断応力 1 である。横の切り口では $\mathbf{n} = (0, 1)$ で、$\mathbf{t} = (1, 1)$。垂直応力 1、せん断応力 1 である。図で切り口を回し、二つの成分を追ってみよう。