並べかえ定理
学校では「足し算は順序を変えても和は変わらない」と習う。有限個の和については正しい。無限個の和についてはそうではない。そのもっともはっきりした例が、リーマンが積分を定義したのと同じ 1854 年の教授資格論文に出てくる。
和が ln 2 になる級数
交代調和級数
$$1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \frac{1}{5} - \cdots$$は収束し、その和は $\ln 2 \approx 0.6931$ である。しかし、この級数にはもろいところがある。正の項と負の項を分けると、それぞれ単独では無限大になるのである。
$$1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \cdots = \infty, \qquad \frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{1}{6} + \cdots = \infty.$$この級数が収束するのは、正の項と負の項が交互に現れて打ち消しあっているからにすぎない。このように収束するが、絶対値の和は無限大になる級数を条件収束するという。
どんな数でも
リーマンは、条件収束する級数では、項を並べかえればどんな和でも得られることに気づいた。目標をたとえば 1.5 として、次のようにする。
- 1.5 を超えるまで正の項 $1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \cdots$ を足す。
- 1.5 を下回るまで負の項 $-\frac{1}{2} - \frac{1}{4} - \cdots$ を足す。
- まだ使っていない正の項にもどり、くり返す。
それぞれの組は単独で無限大なので、目標をもう一度超えるのに十分な項がいつも残っている。そして項はしだいに小さくなるので、目標のまわりの揺れも小さくなっていく。並べかえた級数の和はちょうど 1.5 になる。もとの級数のどの項もちょうど一回ずつ現れ、変わったのは順序だけである。
同じやり方で、級数を $+\infty$ や $-\infty$ に発散させることもできる。
練習:正一つ、負二つ
交代調和級数を、正の項一つのあとに負の項を二つ続ける順に並べかえる。
$$1 - \frac{1}{2} - \frac{1}{4} + \frac{1}{3} - \frac{1}{6} - \frac{1}{8} + \frac{1}{5} - \frac{1}{10} - \frac{1}{12} + \cdots$$和が $\frac{1}{2}\ln 2$ になることを示せ。
各正の項を、そのすぐあとの最初の負の項と組にする。$\left(1 - \frac{1}{2}\right) - \frac{1}{4} + \left(\frac{1}{3} - \frac{1}{6}\right) - \frac{1}{8} + \left(\frac{1}{5} - \frac{1}{10}\right) - \cdots$。各かっこは正の項の半分だから、$\frac{1}{2} - \frac{1}{4} + \frac{1}{6} - \frac{1}{8} + \frac{1}{10} - \cdots = \frac{1}{2}\left(1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \cdots\right) = \frac{1}{2}\ln 2$。同じ項でも、順序を変えると和は半分になる。
練習:目標 1.5 への最初の数歩
目標を 1.5 としてこのやり方をあてはめると、最初の負の項の前に正の項をいくつ足すか。
$1 = 1$、$1 + \frac{1}{3} \approx 1.333$、さらに $\frac{1}{5}$ を足すと $1.533$ で、1.5 を超える。正の項は三つ($1, \frac{1}{3}, \frac{1}{5}$)である。次に $-\frac{1}{2}$ がきて和は $1.033$ となり、1.5 を下回るので、正の項 $\frac{1}{7}, \frac{1}{9}, \ldots$ にもどる。
出典: Bernhard Riemann、「Über die Darstellbarkeit einer Function durch eine trigonometrische Reihe」(1854、1867 年刊)、第 3 節 · Peter Gustav Lejeune Dirichlet、「Beweis des Satzes, dass jede unbegrenzte arithmetische Progression…」(1837) · Konrad Knopp、Theory and Application of Infinite Series(1928)。