次のように書く。

$$1+\frac12+\frac14+\frac18+\cdots=2.$$

$3+4=7$ のような計算に見える。左に項、右に結果。しかし、これらの項をすべて足した人は誰もいないし、これからもいない。ここでの等号は、第4章が挙げたどの仕事とも違う仕事をしている。それが主張しているのは、部分和

$$1,\quad1.5,\quad1.75,\quad1.875,\quad\ldots$$

が望むだけ $2$ に近づく、ということである。記号では

$$\sum_{n=0}^{\infty}\frac1{2^n}=\lim_{N\to\infty}\sum_{n=0}^{N}\frac1{2^n}=2.$$

$\Sigma$ の上の $\infty$ は、前の文章の方向としての $\infty$ と同じである。最後の項ではなく、続けよという指示なのだ。

0.999… = 1

学生をいちばん落ち着かなくさせる等式は

$$0.999\ldots=1$$

である。多くの人は、$0.999\ldots$ は $1$ に「とても近づくが、けっしてたどり着かない」と考える。この反論には記号論的な根があり、点線は進行中の過程を描いているように見え、過程は終わらないからである。しかし $0.999\ldots$ は過程ではない。その過程の極限の名前である。

$$0.999\ldots=\frac9{10}+\frac9{100}+\frac9{1000}+\cdots=\frac{9/10}{1-1/10}=1.$$

研究者のデイヴィッド・トールとシュロモ・ヴィナーは、古典となった 1981 年の研究で、これを概念イメージ(学生が記号を見て思い浮かべるもの)と概念定義の衝突と呼んだ。イメージは「近づいていく何か」であり、定義は「すべてがそこへ近づいていく数」である。

人をだます和

部分和がどこにも近づかないときも、$=$ を使った書き方は変わらない。危険はそこにある。

グランディの級数。 1703 年、イタリアの神父グイド・グランディは

$$1-1+1-1+1-\cdots$$

を考えた。ある組み方では $(1-1)+(1-1)+\cdots=0$。別の組み方では $1-(1-1)-(1-1)-\cdots=1$。グランディは和が $\frac12$ だと結論し、そこに無からの世界創造の姿を見た。部分和 $1,0,1,0,\ldots$ はどこにも近づかない。この級数は、極限の意味での和をもたない。

オイラーの $-1$。 等比級数の公式 $1+x+x^2+\cdots=\frac1{1-x}$ は $|x|<1$ で成り立つ。オイラーはこれを $x=2$ に使って

$$1+2+4+8+\cdots=\frac1{1-2}=-1$$

と書いた。正の数の和が負になったのである。書き方はこの代入に抗議もせず受け入れた。点線つきのすべての $=$ に収束の証明を求めるには、19 世紀の数学者たちを待たなければならなかった。

順序が大事になる

有限の和では、項の順序は関係ない。$3+4=4+3$。無限の和では、関係しうる。交代調和級数

$$1-\frac12+\frac13-\frac14+\frac15-\cdots=\ln2\approx0.693$$

は収束する。では同じ項を、正の項一つのあとに負の項を二つ置くように並べ替えてみよう。

$$1-\frac12-\frac14+\frac13-\frac16-\frac18+\frac15-\frac1{10}-\frac1{12}+\cdots$$

三つずつまとめると、各組は $\frac1{2k-1}-\frac1{2(2k-1)}-\frac1{4k}=\frac12\left(\frac1{2k-1}-\frac1{2k}\right)$ で、和全体はもとの半分、$\frac12\ln2$ になる。ベルンハルト・リーマンは、このような級数では、うまく並べ替えれば望むどんな値にもできることを証明した。記号 $\Sigma$ は項の順序を見せない。そしてここでは、順序がすべてなのである。

練習:0.333… と 0.999…

$0.333\ldots$ を等比級数として書き、和を計算せよ。次に、その結果を使って $0.999\ldots$ を求めよ。

$0.333\ldots=\frac3{10}+\frac3{100}+\cdots=\frac{3/10}{1-1/10}=\frac13$。3 倍すると $0.999\ldots=3\cdot\frac13=1$。$0.333\ldots=\frac13$ を受け入れて $0.999\ldots=1$ を拒む人は、3 倍することを拒んでいるのである。

練習:アキレスが追いつく場所

コラムのデータを使い、級数を使わずに出会う地点を求め、級数で確かめよ。

アキレスが亀に追いつくまでに走る距離を $d$ とする。同じ時間に亀は $\frac{d}{10}$ 走るので、$d=100+\frac d{10}$、したがって $d=\frac{1000}9=111.1\ldots$ メートル。等比級数でも同じ値になる。$\frac{100}{1-1/10}=\frac{1000}{9}$。


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