明日も太陽は昇るか? 継起の規則
古典的な確率は原因から結果へ向かう。硬貨が公正だとわかっているとき、表が出る確率はいくらか。だが問題は逆であることが多い。結果を見て、原因について知りたいのである。ある結果を見たあとで、硬貨について何が言えるか。この原因の確率をはじめて数学的に扱ったのはイギリスの牧師トマス・ベイズで、その論文は彼の死後、1763 年に発表された。ラプラスは 1774 年に、ベイズを知らないまま独立に同じ考えに達した。そしてそれを発展させ、応用したのはラプラスである。
中身のわからない壺
白い玉と黒い玉が、わからない割合 $p$ で入った壺を考える。$p$ については何も知らない。0 から 1 までのどの値も同じくらいありそうに思える。玉を $n$ 個(毎回戻しながら)取り出したところ、すべて白だった。次も白である確率はいくらか。
割合が $p$ なら、白が $n$ 回続く確率は $p^n$ である。見たことをよく説明する $p$ の値ほど重みが大きくなる。各 $p$ に $p^n$ の重みをつけると、次が白である確率は、この重みでとった $p$ の平均になる。
$$P(\text{次も白}) = \frac{\int_0^1 p \cdot p^n\,dp}{\int_0^1 p^n\,dp} = \frac{\frac{1}{n+2}}{\frac{1}{n+1}} = \frac{n+1}{n+2}.$$これがラプラスの継起の規則である。観測がまったくないとき($n = 0$)は $\frac{1}{2}$。白が一つ出たあとは $\frac{2}{3}$、十個出たあとは $\frac{11}{12}$。もっと一般に、$n$ 回のうち $s$ 回白が出たなら、次が白である確率は $\frac{s+1}{n+2}$ である。
図は、白が積み重なるにつれて重みの曲線 $(n+1)p^n$ がどう変わるかを示している。曲線は $p = 1$ の近くに集まっていくが、確実になることはけっしてない。
日の出
1814 年の『哲学的試論』で、ラプラスはこの規則を、のちに有名になる例にあてはめた。記録に残る歴史が 5000 年、つまり $1\,826\,213$ 日あり、そのすべての日に太陽が昇ったとする。規則によれば、明日太陽が昇る確率は
$$\frac{1\,826\,214}{1\,826\,215}$$であり、ラプラスは、明日太陽が昇るほうに $1\,826\,214$ 対 1 で賭けられると言った。
しかし同じページに、彼は多くの人が忘れている但し書きを加えている。この数字は、日の出の並びしか知らない人にとってのものである。昼と季節を支配する法則を知っている人は、いまあるものの何ひとつ太陽の運動を止められないことを知っている、と彼は書いた。その人にとって確率は「比べものにならないほど大きい」。継起の規則とは、ほかに何も知らないときに残るものなのである。
練習:重みの合計は 1
$\int_0^1 p^n\,dp = \frac{1}{n+1}$ を示し、図の曲線 $(n+1)p^n$ の面積が 1、平均が $\frac{n+1}{n+2}$ であることを導け。
$p^n$ の原始関数のひとつは $\frac{p^{n+1}}{n+1}$ で、$p = 1$ で $\frac{1}{n+1}$、$p = 0$ で 0 となる。$n+1$ を掛ければ面積は 1 である。平均は $\int_0^1 p\,(n+1)p^n\,dp = (n+1)\cdot\frac{1}{n+2} = \frac{n+1}{n+2}$ で、まさに継起の規則になる。
練習:十本中九本、百本中九十本
ある選手はフリースロー 10 本中 9 本を決め、別の選手は 100 本中 90 本を決めた。継起の規則によれば、それぞれが次を決める確率はいくらか。
一人目は $\frac{9+1}{10+2} = \frac{10}{12} \approx 0.83$、二人目は $\frac{90+1}{100+2} = \frac{91}{102} \approx 0.89$ である。観測された割合はどちらも 90% だが、規則はデータの多いほうをより信頼する。観測が少ないと、見積もりを $\frac{1}{2}$ のほうへ引き寄せるのである。
出典: Pierre-Simon Laplace、「Mémoire sur la probabilité des causes par les événements」、Mémoires de mathématique et de physique présentés à l’Académie 6(1774) · Pierre-Simon Laplace、Essai philosophique sur les probabilités(1814) · Thomas Bayes、「An Essay towards Solving a Problem in the Doctrine of Chances」、Philosophical Transactions 53(1763) · Stephen M. Stigler、「Laplace’s 1774 Memoir on Inverse Probability」、Statistical Science 1(1986) · Sharon Bertsch McGrayne、The Theory That Would Not Die(2011)。