ITA 2022 – 第1次試験:数学の解説
出典: ITA ――第1次試験の問題 と公式の正答。ファイルは ITA の過去問ページにある。
ITA 2022 の第1次試験は選択式70問で、物理15問、ポルトガル語15問、英語10問、 数学15問、化学15問であった。本稿ではそのうち数学の問題を、試験と同じ 41番から55番の番号で扱う。
試験の記法。 $\mathbb{N} = \{1, 2, 3, \dots\}$;$i$ は虚数単位($i^2 = -1$); $M_n(\mathbb{R})$ は実数成分の $n \times n$ 行列全体;$\overline{AB}$ は $A$、$B$ を端点とする 線分で、$m(\overline{AB})$ はその長さ;$A\hat{O}B$ は半直線 $\overrightarrow{OA}$ と $\overrightarrow{OB}$ がつくる、頂点 $O$ の角。
正答一覧
| 問題 | 内容 | 正答 |
|---|---|---|
| 41 | 対数:底の変換 | B |
| 42 | 平面図形:垂直二等分線と三平方の定理 | E |
| 43 | 同値な連立一次方程式 | C |
| 44 | 複素数:実数に関する命題 | A |
| 45 | 多項式と複素平面上の面積 | D |
| 46 | 行列:可換性と行列式 | E |
| 47 | 正接と等差数列 | D |
| 48 | 二次曲線:双曲線の中心 | C |
| 49 | 空間図形:立方体の中の角錐と外接球 | D |
| 50 | 空間における位置関係 | A |
| 51 | 2進表記と確率 | C |
| 52 | 確率:立方体の頂点を通る直線 | A |
| 53 | 三角形と三角比 | C |
| 54 | 三角方程式 | C |
| 55 | 正弦定理と外接円 | C |
問題 41:底が 120 と 14400 の対数の和
問題文
$$x = 9\log_{120} 2 + 3\log_{120} 3 + 2\log_{14400} 125$$のとき、次のことがいえる。
- A) $x = 2$。
- B) $x = 3$。
- C) $x = 4$。
- D) $x = 5$。
- E) $x = 6$。
解答
1. 底をそろえる。 $14400 = 120^2$ に注目する。底の変換公式より
$$\log_{14400} 125 = \frac{\log_{120} 125}{\log_{120} 120^2} = \frac{1}{2}\log_{120} 5^3 = \frac{3}{2}\log_{120} 5$$よって $2\log_{14400} 125 = 3\log_{120} 5$。
2. 項をまとめる。 係数を指数に移すと
$$x = \log_{120} 2^9 + \log_{120} 3^3 + \log_{120} 5^3 = \log_{120}\left(2^9 \cdot 3^3 \cdot 5^3\right)$$3. 立方数に気づく。 $2^9 \cdot 3^3 \cdot 5^3 = (2^3 \cdot 3 \cdot 5)^3 = 120^3$。したがって
$$x = \log_{120} 120^3 = 3$$答え: B($x = 3$)。
復習は対数の性質を参照。
問題 42:A と C から等距離の点
問題文
頂点 $A$、$B$、$C$ をもち、$B$ で直角となる三角形を考える。$r$ を $A$ と $C$ を通る直線とし、 $O$ を $A$ と $C$ から等距離にあり、$r$ に関して $B$ と同じ側にある点とする。 $m(\overline{AO}) = 85$、$m(\overline{AB}) = 10$、$m(\overline{BC}) = 24$ のとき、$O$ から $r$ までの距離は
- A) 64。
- B) 66。
- C) 74。
- D) 76。
- E) 84。
解答
1. 斜辺。 $B$ で直角の三角形なので
$$m(\overline{AC}) = \sqrt{10^2 + 24^2} = \sqrt{676} = 26$$2. $O$ の位置。 $A$ と $C$ から等距離の点の集まりは $\overline{AC}$ の垂直二等分線であり、 $\overline{AC}$ の中点 $M$ で $r$ と垂直に交わる。したがって $O$ から $r$ までの距離は $m(\overline{OM})$ で、三角形 $AMO$ は $M$ で直角、$m(\overline{AM}) = 13$ である。
3. もう一度三平方の定理。
$$m(\overline{OM}) = \sqrt{85^2 - 13^2} = \sqrt{7225 - 169} = \sqrt{7056} = 84$$「$B$ と同じ側」という条件は対称な2点のうち一方を選ぶだけで、距離は変わらない。
答え: E(84)。
復習は三平方の定理を参照。
問題 43:2つの連立方程式が同値になるのはいつか
問題文
$m \in \mathbb{R}$ とする。次の連立一次方程式を考える。
正しいものを選べ。
- A) $S_1$ と $S_2$ が同値になる $m \in \mathbb{R}$ は存在しない。
- B) $S_1$ と $S_2$ が同値になる $m > 0$ がちょうど1つ存在する。
- C) $S_1$ と $S_2$ が同値になる $m < 0$ がちょうど1つ存在する。
- D) $S_1$ と $S_2$ が同値になる $m$ の値がちょうど2つ存在する。
- E) $S_1$ と $S_2$ が同値になる $m$ の値は無数に存在する。
解答
2つの連立方程式が同値とは、解の集合が等しいことである。それぞれを $m$ を用いて解く。
1. $S_1$ を解く。 第1式より $y = 4x - 2$。第3式に代入すると
$$12x - 3(4x - 2) + z = 8 \quad\Rightarrow\quad 6 + z = 8 \quad\Rightarrow\quad z = 2$$第2式に代入すると $-16x + m^2(4x - 2) + 2 = -10$、すなわち
$$(4m^2 - 16)\,x = 2m^2 - 12$$- $m = \pm 2$ なら $0 \cdot x = -4$ となり、$S_1$ は解をもたない。
- $m \ne \pm 2$ なら解はただ1つ:$x = \dfrac{m^2 - 6}{2(m^2 - 4)}$、$y = 4x - 2$、$z = 2$。
2. $S_2$ を解く。 第2式より $y = z - \frac{14}{5}$。第3式に代入すると
$$5m\left(z - \tfrac{14}{5}\right) + (14 - 5m)z = 14m^2 - 56 \quad\Rightarrow\quad 14z - 14m = 14m^2 - 56$$$$z = m^2 + m - 4$$さらに第1式から $10x = m^2 + m - 1 - z = 3$、よって $x = \frac{3}{10}$。したがって $S_2$ は つねにただ1つの解をもつ(係数行列式は $-700$ で、決して0にならない)。
3. 解を一致させる。 $S_2$ はつねに解がただ1つなので、$S_1$ もそうでなければならず (よって $m \ne \pm 2$)、解が一致する必要がある。
- $z$:$m^2 + m - 4 = 2 \Rightarrow m^2 + m - 6 = 0 \Rightarrow m = 2$ または $m = -3$。$m = 2$ は除く。
- $m = -3$ のときの $x$:$\dfrac{9 - 6}{2(9 - 4)} = \dfrac{3}{10}$ ✔
- $y$:$S_1$ では $4 \cdot \frac{3}{10} - 2 = -\frac{4}{5}$、$S_2$ では $2 - \frac{14}{5} = -\frac{4}{5}$ ✔
条件を満たすのは $m = -3$ だけで、どちらの解も $\left(\frac{3}{10}, -\frac{4}{5}, 2\right)$ である。
答え: C($m < 0$ がちょうど1つ、すなわち $m = -3$)。
ひっかけに注意: $z$ の方程式からは $2$ と $-3$ の2つの値が出るので、D を選びがちである。 しかし $m = 2$ のとき $S_1$ は解をもたないが、$S_2$ は解をもつ。
問題 44:和・差・積・商が実数
問題文
$z_1, z_2 \in \mathbb{C}$、$z_2 \ne 0$ とする。次の命題を考える。
- I. $z_1 + z_2 \in \mathbb{R}$ かつ $z_1 - z_2 \in \mathbb{R}$ ならば、$z_1 \in \mathbb{R}$ かつ $z_2 \in \mathbb{R}$。
- II. $z_1 \cdot z_2 \in \mathbb{R}$ かつ $z_1/z_2 \in \mathbb{R}$ ならば、$z_1 \in \mathbb{R}$ かつ $z_2 \in \mathbb{R}$。
- III. $z_1 + z_2 \in \mathbb{R}$ かつ $z_1 \cdot z_2 \in \mathbb{R}$ ならば、$z_1 \in \mathbb{R}$ かつ $z_2 \in \mathbb{R}$。
つねに正しいものは:
- A) I のみ。
- B) I と II。
- C) I と III のみ。
- D) II のみ。
- E) III のみ。
解答
I. 正しい。 $s = z_1 + z_2$ と $d = z_1 - z_2$ が実数なら
$$z_1 = \frac{s + d}{2} \in \mathbb{R} \qquad\text{かつ}\qquad z_2 = \frac{s - d}{2} \in \mathbb{R}$$II. 誤り。 反例:$z_1 = z_2 = i$。このとき $z_1 z_2 = -1$、$z_1/z_2 = 1$ は実数だが、 $i \notin \mathbb{R}$。
III. 誤り。 反例:$z_1 = i$、$z_2 = -i$。このとき $z_1 + z_2 = 0$、$z_1 z_2 = 1$ は実数である。 (一般に $z_1$、$z_2$ は実数 $s$、$p$ に対する $t^2 - st + p = 0$ の2解であり、それらは共役な 複素数になりうる。)
答え: A(I のみ)。
問題 45:根を頂点とする四角形
問題文
多項式 $p(z) = z^4 - 6z^3 + 14z^2 - 6z + 13$ を考え、$p(i) = 0$ に注意する。複素平面上で $p(z)$ の根を頂点とする四角形を考える。この四角形の面積は
- A) 4。
- B) 6。
- C) 8。
- D) 9。
- E) 10。
解答
1. もう1つの根はただで手に入る。 係数が実数なので、共役な $-i$ も根である。したがって $(z - i)(z + i) = z^2 + 1$ は $p(z)$ を割り切る:
$$z^4 - 6z^3 + 14z^2 - 6z + 13 = (z^2 + 1)(z^2 - 6z + 13)$$(展開して確かめる:$z^4 - 6z^3 + 13z^2 + z^2 - 6z + 13$。)
2. 残りの根。 $z^2 - 6z + 13 = 0 \Rightarrow z = \dfrac{6 \pm \sqrt{36 - 52}}{2} = 3 \pm 2i$。
3. 図形。 頂点は $(0, 1)$、$(0, -1)$、$(3, 2)$、$(3, -2)$。縦の平行な2辺の長さが $2$($x = 0$)と $4$($x = 3$)、高さ $3$ の台形である:
$$A = \frac{(2 + 4)\cdot 3}{2} = 9$$答え: D(9)。
問題 46:行列に関する3つの命題
問題文
$n \ge 2$、$A, B \in M_n(\mathbb{R})$ とする。次の命題を考える。
- I. $AB \ne BA$ ならば、$A$ か $B$ のどちらかは正則でない。
- II. $AB = 0$ ならば $BA = 0$。
- III. $A^T = -A^2$ かつ $A$ が正則ならば、$\det(A) = -1$。
正しいものは:
- A) I のみ。
- B) II のみ。
- C) III のみ。
- D) I と III のみ。
- E) どれも正しくない。
解答
I. 誤り。 正則な2つの行列でも可換とは限らない。たとえば
$$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}, \quad B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}: \qquad AB = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \ne \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} = BA$$で、どちらも行列式は 1 である。
II. 誤り。
$$A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, \quad B = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}: \qquad AB = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}, \quad BA = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \ne 0$$III. 誤り。 $A^T = -A^2$ の両辺の行列式をとる($\det(A^T) = \det A$、 $\det(-M) = (-1)^n \det M$ に注意):
$$\det A = (-1)^n (\det A)^2 \quad\Rightarrow\quad \det A = (-1)^n$$($\det A \ne 0$ で割った。)$n$ が偶数なら $\det A = 1$ である。しかもそのような行列は実在する。 $-60^\circ$ の回転行列
$$A = \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$$は $A^T = R(60^\circ)$、$-A^2 = -R(-120^\circ) = R(60^\circ)$ を満たし、$\det A = 1$ である。
答え: E(どれも正しくない)。
問題 47:等差数列をなす正接
問題文
$x, r \in \mathbb{R}$ とし、
$$-\frac{\pi}{2} < x - r \le x + r < \frac{\pi}{2}$$とする。$\tan(x - r)$、$\tan(x)$、$\tan(x + r)$(この順)について、次のことがいえる。
- A) 決して等差数列にならない。
- B) 等差数列になりうるのは $r = 0$ のときだけである。
- C) 等差数列になりうるのは $r = 0$ または $r = \sqrt{3}/3$ のときだけである。
- D) 無数に多くの異なる $r$ に対して等差数列になりうる。
- E) 問題の条件を満たすすべての $x$、$r$ に対して等差数列になる。
解答
3つの数が等差数列をなすのは、中央の数が両端の平均のときである: $\tan(x - r) + \tan(x + r) = 2\tan x$。
1. 正接を足す。 $\tan a + \tan b = \dfrac{\sin(a + b)}{\cos a \cos b}$ を使うと
$$\frac{\sin 2x}{\cos(x - r)\cos(x + r)} = \frac{2\sin x}{\cos x}$$$\sin 2x = 2\sin x\cos x$ なので、これは次と同値である。
$$\sin x\left[\cos^2 x - \cos(x - r)\cos(x + r)\right] = 0$$2. 2つの場合。 $\cos(x - r)\cos(x + r) = \cos^2 x - \sin^2 r$ より、角かっこの中は $\sin^2 r$。 よって条件は
$$\sin x \cdot \sin^2 r = 0$$- $\sin x = 0$、すなわち $x = 0$(区間内で可能な唯一の値)なら、$0 \le r < \frac{\pi}{2}$ のどんな $r$ でもよい:$\tan(-r)$、$0$、$\tan r$ は等差数列である。
- $x \ne 0$ なら $r = 0$(定数列)でなければならない。
したがって等差数列を生む $r$ は無数にある(いずれも $x = 0$)。ただし、いつもではない。たとえば $x = \frac{\pi}{6}$、$r = \frac{\pi}{6}$ では $0, \frac{\sqrt{3}}{3}, \sqrt{3}$ となり、等差数列ではない。
答え: D。
復習は加法定理を参照。
問題 48:双曲線の中心はどこか
問題文
$b \in \mathbb{R}$ を、方程式
$$x^2 - 6bx - (1 - b^2)(y^2 - 2by) + b^4 + 8b^2 - 1 = 0$$が双曲線を表すようにとる。この双曲線の中心 $C$ について、次のことがいえる。
- A) $C \in \{(x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2/9 + y^2/12 < 1\}$。
- B) $C \in \{(x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2/4 + y^2/2 > 1\}$。
- C) $C \in \{(x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2/9 - y^2/2 < 1\}$。
- D) $C \in \{(x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid 3x^2 - 2y^2 > 1\}$。
- E) 上のどれでもない。
解答
1. 平方完成。 $x^2 - 6bx = (x - 3b)^2 - 9b^2$、$y^2 - 2by = (y - b)^2 - b^2$。代入すると
$$(x - 3b)^2 - 9b^2 - (1 - b^2)(y - b)^2 + (1 - b^2)b^2 + b^4 + 8b^2 - 1 = 0$$定数項の和は $-9b^2 + b^2 - b^4 + b^4 + 8b^2 - 1 = -1$。よって
$$(x - 3b)^2 - (1 - b^2)(y - b)^2 = 1$$2. 双曲線になる条件。 $(y - b)^2$ の係数が正でなければならない:$1 - b^2 > 0$、 すなわち $-1 < b < 1$。中心は $C = (3b, b)$。
3. 選択肢を調べる。 $x = 3b$、$y = b$、$0 \le b^2 < 1$ として:
- A) $b^2 + \frac{b^2}{12} = \frac{13}{12}b^2 < 1$ は $b^2 \ge \frac{12}{13}$ で成り立たない(たとえば $b = 0.99$)。
- B) $\frac{9b^2}{4} + \frac{b^2}{2} = \frac{11}{4}b^2 > 1$ は $b = 0$ で成り立たない。
- C) $\frac{9b^2}{9} - \frac{b^2}{2} = \frac{b^2}{2} < \frac{1}{2} < 1$ ✔ つねに成り立つ。
- D) $27b^2 - 2b^2 = 25b^2 > 1$ は $b = 0$ で成り立たない。
答え: C。
問題 49:立方体の中の六角錐
問題文
$P$ を正角錐とし、その頂点 $V$ は1辺 $l$ の立方体の頂点の1つ、底面は立方体の12本の辺のうち $V$ も $V$ の対頂点も含まない6本の辺の中点がつくる六角形とする。$P$ に外接する球の半径は
- A) $l\sqrt{2}/12$。
- B) $l\sqrt{3}/12$。
- C) $5l\sqrt{2}/12$。
- D) $5l\sqrt{3}/12$。
- E) $l\sqrt{3}/6$。
解答
1. 座標。 立方体を $[0, l]^3$ におき、$V = (0, 0, 0)$ とする。対頂点は $(l, l, l)$。 どちらにも接しない6本の辺の中点は $\left(l, \frac{l}{2}, 0\right)$、$\left(0, l, \frac{l}{2}\right)$ などで、 すべて $x + y + z = \frac{3l}{2}$ を満たす。この六角形は、中心 $O = \left(\frac{l}{2}, \frac{l}{2}, \frac{l}{2}\right)$ を通り対角線に垂直な平面による立方体の切り口である。
2. 角錐の寸法。
- 六角形の1辺:隣り合う辺の中点間の距離で、$\frac{l\sqrt{2}}{2}$。正六角形の外接円の半径は1辺に等しい:$\rho = \frac{l\sqrt{2}}{2}$。
- 高さ:$h = m(\overline{VO}) = \frac{l\sqrt{3}}{2}$(立方体の対角線の半分)。
3. 外接球。 外接球の中心は軸 $VO$ 上にあり、$V$ からの距離が $R$ である。六角形の頂点からの距離も $R$ なので
$$R^2 = (h - R)^2 + \rho^2 \quad\Rightarrow\quad R = \frac{h^2 + \rho^2}{2h} = \frac{\frac{3l^2}{4} + \frac{l^2}{2}}{l\sqrt{3}} = \frac{5l^2/4}{l\sqrt{3}} = \frac{5l\sqrt{3}}{12}$$$R \approx 0.72\,l < h \approx 0.87\,l$ であり、中心は予想どおり $V$ と底面の間にある。
答え: D($5l\sqrt{3}/12$)。
問題 50:直線、平面、等距離の点
問題文
次の命題を考える。
- I. $\alpha$ と $\beta$ が異なる平行な平面で、$r$ が $r \cap \alpha \ne \varnothing$ を満たす直線ならば、$r \cap \beta \ne \varnothing$。
- II. $r$ が直線で $P$ と $Q$ が異なる2点ならば、$r$ を含み $P$ と $Q$ から等距離な平面は無数に存在する。
- III. 空間内の4点が与えられたとき、それらから等距離な点がただ1つ存在する。
正しいものは:
- A) どれも正しくない。
- B) I のみ。
- C) II のみ。
- D) III のみ。
- E) I、II、III。
解答
I. 誤り。 $r$ が $\alpha$ に含まれるとき、$r \cap \alpha \ne \varnothing$ だが、$r$ は $\beta$ と 平行で交わらない。
II. 誤り。 平面が $P$ と $Q$ から等距離になるのは、直線 $PQ$ と平行であるか、 $\overline{PQ}$ の中点 $M$ を通るときである。$r$ を含む平面のうち、一般に $M$ を通るものは 高々1つ、$PQ$ と平行なものも高々1つである。たとえば $r$ を $Oz$ 軸、$P = (1, 0, 0)$、 $Q = (0, 2, 0)$ とすると、$Oz$ 軸を含み $M = \left(\frac12, 1, 0\right)$ を通る平面は $y = 2x$ だけ、 $PQ$ に平行なものは $y = -2x$ だけである。2つしかなく、無数ではない。
III. 誤り。 同一平面上にあって同一円周上にない4点には、等距離な点がない(たとえば長方形で ない平行四辺形の4頂点)。また同一円周上にあれば無数にある(その円の軸上のすべての点)。
答え: A(どれも正しくない)。
問題 51:k + 1 で2進数の桁が増えるとき
問題文
$N \in \mathbb{N}$ が
$$N = g \cdot 2^0 + f \cdot 2^1 + e \cdot 2^2 + d \cdot 2^3 + c \cdot 2^4 + b \cdot 2^5 + a \cdot 2^6$$の形であるとき、その2進表記を $(abcdefg)_2$ とする。ただし $a, b, c, d, e, f, g \in \{0, 1\}$ で、 左から見て最初の 1 までの 0 は省略する。$k$ を $1 \le k \le 100$ の整数とする。$k$ と $k + 1$ の 2進表記の桁数が異なる確率はいくらか。
- A) 2%。
- B) 4%。
- C) 6%。
- D) 8%。
- E) 10%。
解答
1. 桁数が変わるとき。 2進で $n$ 桁の数は $2^{n-1}$ 以上 $2^n - 1$ 以下である。1 を足して 桁が増えるのは $k = 2^n - 1$ のとき(たとえば $111_2 + 1 = 1000_2$)、つまり $k + 1$ が 2 のべき乗のときだけである。
2. 数える。 $2 \le k + 1 \le 101$ より $k + 1 \in \{2, 4, 8, 16, 32, 64\}$ の6通り ($k = 1, 3, 7, 15, 31, 63$)。
$$P = \frac{6}{100} = 6\%$$答え: C(6%)。
問題 52:立方体の頂点を通る2本の直線
問題文
立方体 $C$ の異なる2頂点を通る直線全体の集合を $A$ とする。$A$ から異なる2本の直線を 無作為に選ぶとき、それらが $C$ の頂点で交わる確率は:
- A) $4/9$。
- B) $1/2$。
- C) $2/3$。
- D) $1/14$。
- E) $3/7$。
解答
1. 直線の本数。 立方体には一直線上に並ぶ3頂点がないので、頂点の各組が異なる直線を 定める:$\binom{8}{2} = 28$ 本。
2. 全体の場合の数。 異なる直線の組:$\binom{28}{2} = 378$。
3. 条件を満たす場合。 各頂点を通る直線は7本(他の各頂点へ1本ずつ)で、その頂点で交わる 組が $\binom{7}{2} = 21$ ある。異なる2直線の共有点は高々1つなので、重複して数える組はない: $8 \cdot 21 = 168$。
$$P = \frac{168}{378} = \frac{4}{9}$$答え: A($4/9$)。
復習は確率入門を参照。
問題 53:三角形の中の余弦の不等式
問題文
$\alpha$、$\beta$、$\theta$ を三角形の内角とする。$\cos(\beta + \theta) \le \cos(\alpha + 2\beta)$ ならば、次のことがいえる。
- A) この三角形は二等辺三角形ではない。
- B) この三角形は直角三角形ではない。
- C) この三角形は鋭角三角形ではない。
- D) この三角形は鈍角三角形ではない。
- E) 上のどれも保証できない。
解答
1. $\alpha + \beta + \theta = \pi$ を使って書き換える。
- $\beta + \theta = \pi - \alpha$ なので $\cos(\beta + \theta) = -\cos\alpha$。
- $\alpha + 2\beta = \pi - (\theta - \beta)$ なので $\cos(\alpha + 2\beta) = -\cos(\theta - \beta)$。
条件は次のようになる。
$$-\cos\alpha \le -\cos(\theta - \beta) \quad\Longleftrightarrow\quad \cos\alpha \ge \cos|\theta - \beta|$$2. 角を比べる。 $\alpha$ と $|\theta - \beta|$ はともに $[0, \pi)$ にあり、そこで余弦は減少関数 なので、$\alpha \le |\theta - \beta|$。
3. 結論。 $\theta \ge \beta$ としてよい(逆の場合も同様)。すると $\alpha + \beta \le \theta$ で、 $\alpha + \beta = \pi - \theta$ だから
$$\pi - \theta \le \theta \quad\Rightarrow\quad \theta \ge \frac{\pi}{2}$$三角形は直角か鈍角をもつ、すなわち鋭角三角形ではない。ほかの選択肢は成り立たない場合がある。 $\theta = 90^\circ$、$\alpha = \beta = 45^\circ$ は条件を(等号で)満たし、直角二等辺三角形になる。 $\theta = 120^\circ$、$\alpha = \beta = 30^\circ$ は鈍角三角形である。
答え: C。
問題 54:余弦のべきの方程式
問題文
方程式
$$\cos^2(2x) = 3 - \cos^6(x) - 5\cos^2(x)$$の区間 $[0, 2\pi[$ における異なる実数解の個数は
- A) 2。
- B) 3。
- C) 4。
- D) 5。
- E) 6。
解答
1. 1つの変数にまとめる。 $c = \cos^2 x \in [0, 1]$ とおく。$\cos 2x = 2\cos^2 x - 1 = 2c - 1$ より
$$(2c - 1)^2 = 3 - c^3 - 5c \quad\Rightarrow\quad 4c^2 - 4c + 1 = 3 - c^3 - 5c$$$$c^3 + 4c^2 + c - 2 = 0$$2. 因数分解。 $c = -1$ は根($-1 + 4 - 1 - 2 = 0$)なので
$$(c + 1)(c^2 + 3c - 2) = 0 \quad\Rightarrow\quad c = -1 \quad\text{または}\quad c = \frac{-3 \pm \sqrt{17}}{2}$$3. 使える根は1つだけ。 $\sqrt{17} \approx 4.12$ より、$c = \frac{-3 + \sqrt{17}}{2} \approx 0.56$ は $[0, 1]$ にあり、ほかの2つ($-1$ と $\approx -3.56$)は負である。
4. $x$ を数える。 $\cos^2 x = 0.56$ から $\cos x = \pm 0.75$(近似値)。$-1$ と $1$ の間に 真にある余弦の値1つにつき、$[0, 2\pi[$ の角が2つ対応する。合計 $2 \cdot 2 = 4$ 個の解。
答え: C(4)。
復習は区間と古典的な三角方程式を参照。
問題 55:B が鋭角の内接三角形
問題文
頂点 $A$、$B$、$C$ の三角形 $T$ で、$m(\overline{AB}) = 2\sqrt{5}$、$m(\overline{BC}) = 6$ とする。 $A\hat{B}C$ が鋭角で、$T$ が半径 $R = 5$ の円に内接するとき、次のことがいえる。
- A) $m(\overline{AC}) = \sqrt{5}/5$。
- B) $m(\overline{AC}) = 2\sqrt{5}/5$。
- C) $m(\overline{AC}) = 4\sqrt{5}/5$。
- D) $m(\overline{AC}) = 8\sqrt{5}/5$。
- E) $m(\overline{AC}) = 14\sqrt{5}/5$。
解答
内角を $\hat{A}$、$\hat{B}$、$\hat{C}$ と書く。
1. 正弦定理。 $\dfrac{a}{\sin\hat{A}} = 2R = 10$($a = m(\overline{BC})$ など)より
$$\sin\hat{C} = \frac{2\sqrt{5}}{10} = \frac{\sqrt{5}}{5}, \qquad \sin\hat{A} = \frac{6}{10} = \frac{3}{5}$$2. 余弦の符号は? $m(\overline{AB}) < m(\overline{BC})$ なので $\hat{C} < \hat{A}$ であり、$\hat{C}$ は 鋭角:$\cos\hat{C} = \frac{2\sqrt{5}}{5}$。一方 $\hat{A}$ は鋭角($\cos\hat{A} = \frac{4}{5}$)でも 鈍角($\cos\hat{A} = -\frac{4}{5}$)でもありうる。
3. $\hat{B}$ が鋭角であることを使う。 $\hat{B} = \pi - (\hat{A} + \hat{C})$ より $\cos\hat{B} = \sin\hat{A}\sin\hat{C} - \cos\hat{A}\cos\hat{C}$。
- $\cos\hat{A} = \frac{4}{5}$ なら $\cos\hat{B} = \frac{3\sqrt{5}}{25} - \frac{8\sqrt{5}}{25} = -\frac{\sqrt{5}}{5} < 0$ で、$\hat{B}$ は鈍角になってしまう:不適。
- $\cos\hat{A} = -\frac{4}{5}$ なら $\cos\hat{B} = \frac{3\sqrt{5}}{25} + \frac{8\sqrt{5}}{25} = \frac{11\sqrt{5}}{25} > 0$ ✔
4. 辺 $AC$。 $\sin\hat{B} = \sin(\hat{A} + \hat{C}) = \frac{3}{5}\cdot\frac{2\sqrt{5}}{5} - \frac{4}{5}\cdot\frac{\sqrt{5}}{5} = \frac{2\sqrt{5}}{25}$ なので
$$m(\overline{AC}) = 2R\sin\hat{B} = 10 \cdot \frac{2\sqrt{5}}{25} = \frac{4\sqrt{5}}{5}$$余弦定理で確認: $b^2 = 20 + 36 - 2\cdot 2\sqrt{5}\cdot 6 \cdot \frac{11\sqrt{5}}{25} = 56 - \frac{1320}{25} = \frac{16}{5}$、$\sqrt{16/5} = \frac{4\sqrt{5}}{5}$ ✔
答え: C($4\sqrt{5}/5$)。
ひっかけに注意: $\hat{A}$ を鋭角とすると $m(\overline{AC}) = 4\sqrt{5}$ となり、選択肢にすら ないが、そのとき $\hat{B}$ は鈍角になっている。
復習は三角形の解法とあいまいな場合を参照。