アルキメデスの本には完璧な証明が書かれているが、どうやって結果にたどり着いたかは書かれていない。何世紀ものあいだ、数学者たちは彼に秘密の方法があったのではないかと疑ってきた。その疑いは正しく、方法はもっとも思いがけない場所で見つかった。

エラトステネスへの手紙

あることがらは、まず力学的な方法によって私に明らかになったが、そのあとで幾何学によって証明されねばならなかった。この方法による探究は証明を与えないからである。しかし、この方法によって問題についていくらかの知識を得てからのほうが、何も知らないときより証明を見つけるのはずっとやさしい。

— アルキメデス『方法』、エラトステネスへの手紙

『力学的定理の方法』と呼ばれる論考は、地理学者キュレネのエラトステネスにあてた手紙である。そのなかでアルキメデスは自分のやり方を明かしている。図形を無限に多くのごく薄い切片からできているものと考え、それらをてこの上ではかり、既知の図形の切片と一枚ずつくらべるのである。

球をはかる

いちばん美しい例は球である。半径 $r$ の球と、底面の半径 $2r$、高さ $2r$ の円錐と円柱を、軸がてこの腕にそうように置く。支点から距離 $x$ のところで、すべてを腕に垂直な平面で切る。少し幾何学を使うと、球の切り口の面積は $\pi\left(2rx - x^2\right)$、円錐は $\pi x^2$、円柱は $\pi (2r)^2 = 4\pi r^2$ である。したがって

$$\text{球の切り口} + \text{円錐の切り口} = \pi \cdot 2rx.$$

アルキメデスは球と円錐の切り口を、てこの反対側の支点から距離 $2r$ のところへ移し、円柱の切り口は距離 $x$ のもとの場所に残す。モーメントは等しい。

$$2r \cdot \pi \cdot 2rx = x \cdot 4\pi r^2.$$

これがどの切片についても成り立つので、距離 $2r$ につるした球と円錐の全体は、重心が距離 $r$ にある円柱全体とつりあう。てこの法則により

$$2r\,(V_{\text{球}} + V_{\text{円錐}}) = r\,V_{\text{円柱}} \quad\Longrightarrow\quad V_{\text{球}} = \frac{1}{2}\cdot 8\pi r^3 - \frac{8}{3}\pi r^3 = \frac{4}{3}\pi r^3.$$

これはまさに、彼がのちに球と円柱で厳密に証明する体積である。無限に多くの切片を足しあわせることは積分法の中心的な考えで、ニュートンとライプニッツより十八世紀も前のことだった。

祈祷書

950 年ごろ、コンスタンティノープルの写字生が、アルキメデスのいくつかの著作を羊皮紙に書き写した。1229 年、ある修道士が祈祷書をつくるのに羊皮紙を必要とした。彼は写本をばらし、インクを削りとり、紙葉を半分に切り、向きを変えて、その上に祈りを書いた。このように再利用された写本をパリンプセストという。

1906 年、デンマークの文献学者ヨハン・ルズヴィ・ハイベアは、コンスタンティノープルの図書館でこの祈祷書を調べ、ルーペを使って祈りの下にあるアルキメデスの文章を読みとった。それは『方法』の知られている唯一の写本であり、『浮体について』の唯一のギリシア語写本だった。

アルキメデスのパリンプセストの開いた一葉。十三世紀の祈りの文が横向きに書かれ、その下に、ほとんど消えかかった十世紀のアルキメデスの文章がある。
アルキメデスのパリンプセストの開いた一葉。十三世紀の祈りの文が横向きに書かれ、その下に、ほとんど消えかかった十世紀のアルキメデスの文章がある。The Walters Art Museum · Wikimedia Commons · CC BY 3.0

本は二十世紀のはじめにふたたび姿を消し、1998 年にニューヨークの競売に現れた。カビと、上から描かれた偽の彩飾で、ひどくいたんでいた。匿名の買い手が 200 万ドルで落札し、ボルティモアのウォルターズ美術館に寄託した。1999 年から 2008 年まで、科学者と文献学者のチームが、さまざまな波長の光、紫外線、さらには粒子加速器の X 線まで使って画像を撮り、消された文章を読みとった。ハイベアが読めなかった箇所も見つかった。

練習:切り口

切り口の和を確かめよう。球の極を $x = 0$、中心を $x = r$ に置く。$x$ での球の切り口の半径 $\rho$ が $\rho^2 = 2rx - x^2$ を満たすことを示し、球の切り口と円錐(半径 $x$)の切り口の和が $\pi \cdot 2rx$ になることを導け。

切り口は中心から距離 $|x - r|$ にあるから、三平方の定理より $\rho^2 = r^2 - (x - r)^2 = 2rx - x^2$。円錐は頂点が支点にあり、傾き 1 で開いているので、その切り口の半径は $x$ である。面積を足すと $\pi(2rx - x^2) + \pi x^2 = 2\pi r x$ となる。

練習:最後のつりあい

$V_{\text{円柱}} = \pi (2r)^2 \cdot 2r = 8\pi r^3$、$V_{\text{円錐}} = \frac{1}{3}\pi (2r)^2 \cdot 2r = \frac{8}{3}\pi r^3$ として、$2r\,(V_{\text{球}} + V_{\text{円錐}}) = r\,V_{\text{円柱}}$ を解け。

$r$ で割ると $2\,(V_{\text{球}} + \frac{8}{3}\pi r^3) = 8\pi r^3$ だから、$V_{\text{球}} = 4\pi r^3 - \frac{8}{3}\pi r^3 = \frac{4}{3}\pi r^3$ である。

出典: アルキメデス『方法』命題 2 · Johan Ludvig Heiberg、「Eine neue Archimedeshandschrift」、Hermes 42(1907) · Reviel Netz、William Noel、The Archimedes Codex(2007) · Thomas L. Heath、The Method of Archimedes(1912) · William Noel、The Archimedes Palimpsest Project、ウォルターズ美術館。


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