1993 年、アメリカ数学協会は風変わりな本を出版した。ロジャー・ネルセンの編による『言葉のない証明』である。各ページに図が一つあり、ときにはその下に式が一つある。文は一つもない。読者が見て、理解して、誰の説明もなしに納得することが狙いである。この本は大成功を収め、さらに二巻が続き、『マセマティクス・マガジン』誌はいまもこうした証明を載せている。

長方形になる階段

1、2、3、4 個の小さな正方形でできた階段と、同じ階段二つでできた 4×5 の長方形。
1、2、3、4 個の小さな正方形でできた階段と、同じ階段二つでできた 4×5 の長方形。本書のために作成した説明図。

$1+2+3+4$ はいくつか。小さな正方形を並べて階段を描く。それをもう一つ写して、回して横に並べる。二つの階段は $4\times5$ の長方形、つまり $20$ 個の正方形になる。それぞれの階段はその半分である。

$$1+2+3+4=\frac{4\cdot5}{2}=10.$$

しかもこの図は $4$ に依存しない。$n$ 段の階段二つは $n\times(n+1)$ の長方形になるので、

$$1+2+\cdots+n=\frac{n(n+1)}{2}.$$

第4章では、この公式を代数の帰納法で証明した。図は同じことを別のやり方で証明する。一歩ずつ進むのではなく、なぜ長方形の半分が現れるのかを見るのである。

「見よ!」

もっとも有名な言葉のない証明は、12 世紀インドの数学者バースカラのものとされるピタゴラスの定理の証明である。直角をはさむ辺が $a$ と $b$、斜辺が $c$ の直角三角形を四つ、一辺 $c$ の正方形の中に置くと、中央に一辺 $b-a$ の小さな正方形が残る。伝説によれば、バースカラはその下にただ一語、**「見よ!」**と書いた。面積から

$$c^2=4\cdot\frac{ab}{2}+(b-a)^2=2ab+b^2-2ab+a^2=a^2+b^2.$$

おもしろいことに、この「言葉のない証明」を確かめるには一行の代数が必要である。図は部品を示し、計算はそれがぴったり合うことを保証する。

図が証明するとき、だますとき

第1章では、ギリシア人の図形への不信を見た。その不信には理由がある。アマチュア奇術師ポール・カリーが 1953 年に広めた消える正方形のパズルでは、四つのピースで三角形を作り、ピースを入れ替えると、同じ大きさの三角形ができるのに正方形が一つ欠けている。面積はどこへ行ったのか。

秘密は、二つの「三角形」がどちらも三角形ではないことにある。二つの三角形のピースは傾きが違い、それぞれ $\frac25=0.4$ と $\frac38=0.375$ である。いわゆる「斜辺」は実は折れ線で、一方の並べ方ではわずかに内側にへこみ、もう一方ではわずかに外側にふくらむ。その差がちょうど正方形一つ分で、目には見えないほど細い帯に広がっている。

言葉のない証明が証明であるのは、目が頼っているすべての関係――「これらの線は平行だ」「これらの点は一直線上にある」「これらのピースはぴったり合う」――が論証によって保証できるときだけである。目が図の保証する以上のことを仮定するとき、図は錯覚になる。

練習:奇数の和

第4章では、各奇数が L 字形の一層になる図を示した。この考えを使って、足し算をせずに $1+3+5+\cdots+19$ を求めよ。

$1$ から $19$ までの奇数は $10$ 層であり、$10$ 層で一辺 $10$ の正方形になる。和は $10^2=100$ である。

練習:消える正方形の傾き

カリーのパズルでは、一方の三角形のピースの直角をはさむ辺は $2$ と $5$、もう一方は $3$ と $8$、全体の図形は $5$ と $13$ である。傾きを比べて、正方形一つ分を説明せよ。

傾きはそれぞれ $\frac25=0.4$、$\frac38=0.375$、全体は $\frac5{13}\approx0.385$ である。ピースの傾きが違うので、「斜辺」は一本の直線にならない。辺が $5$ と $13$ の本当の三角形の面積は $32.5$ である。一方の並べ方ではピースの合計が $32$、もう一方では空いた正方形とピースを合わせて $33$ になる。この 1 単位の差が、折れ線と直線のあいだの二本の細い帯にある。


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