惑星がある一点をどう引きつけるかを知るには、惑星の各部分の引力をすべて足さなければならない。各部分はそれぞれ違う向きに引くし、力を足すのは手間がかかる。力はベクトルで、それぞれ三つの成分をもつからだ。十八世紀の数学者たちは近道を見つけ、ラプラスはそれを道具に仕立てた。

矢印ではなく数を足す

一点に集中した質量 $M$ について、次の数を考える。

$$V = \frac{M}{r}.$$

ここで $r$ は質量までの距離である(定数 $G$ は省く)。のちにポテンシャルと呼ばれるこの数は、力についての情報をすべてもっている。各方向の引力の成分は、その方向への $V$ の微分なのである。そして大きな利点は、質量がいくつあってもポテンシャルは数としてそのまま足せることだ。まず惑星のすべての部分のポテンシャルを足し、それから微分すれば力が得られる。

方程式

ラプラスは、質量の外のどの点でも、ポテンシャルがとても簡単な方程式に従うことに気づいた。

$$\frac{\partial^2 V}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 V}{\partial y^2} + \frac{\partial^2 V}{\partial z^2} = 0.$$

今日では $\nabla^2 V = 0$ と書き、記号 $\nabla^2$ をラプラシアンと呼ぶ。ラプラスは 1782 年、惑星の形についての論文でこの方程式を球座標で発表し、1787 年には土星の環を研究するなかで上のような直交座標の形で示した。

原点に置いた一つの質量で確かめてみる価値がある。$r = \sqrt{x^2+y^2+z^2}$、$V = \frac{1}{r}$ とすると

$$\frac{\partial V}{\partial x} = -\frac{x}{r^3}, \qquad \frac{\partial^2 V}{\partial x^2} = -\frac{1}{r^3} + \frac{3x^2}{r^5}.$$

三方向を足すと

$$\nabla^2 V = -\frac{3}{r^3} + \frac{3(x^2+y^2+z^2)}{r^5} = -\frac{3}{r^3} + \frac{3}{r^3} = 0.$$

方程式は線形だから、解の和もまた解である。どんな質量の集まりのポテンシャルも、その外ではこの方程式を満たす。ラプラス方程式を満たす関数を調和関数という。

方程式が言っていること

この方程式には簡単な読み方がある。平面を格子点に分けよう。離散版では、$\nabla^2 V = 0$ は各点の値が四つの隣の点の値の平均であることを意味する。

$$V_{i,j} = \frac{V_{i+1,j} + V_{i-1,j} + V_{i,j+1} + V_{i,j-1}}{4}.$$

調和関数は内部に山も谷ももたない。ある点が隣のすべての点より大きければ、それらの平均にはなりえないからだ。最大値と最小値はつねに境界にある。ここから方程式の解き方も見えてくる。境界の値を固定し、内部には何でもよいから値を入れ、各点を隣の点の平均で置きかえることを繰り返す。格子はしだいに解へと「緩和」していく。

下の図では、正方形の板の上の辺が 100 度、残りの三辺が 0 度に保たれている。クリックするたびに、平均をとる操作を何回分か行う。

あらゆるものの方程式

同じ方程式は重力からはるかに離れたところにも現れる。平衡状態の板の温度、真空中の電位、渦のない流体の流れ、張った膜の形は、どれも $\nabla^2 V = 0$ に従う。ラプラシアンは熱方程式、波動方程式、シュレーディンガー方程式にも現れ、画像処理では輪郭の検出に使われる。

質量の内部では方程式が変わる。1813 年、ラプラスの弟子シメオン=ドニ・ポアソンは、そこでは

$$\nabla^2 V = -4\pi G\rho$$

が成り立つことを示した。$\rho$ は密度である(ポテンシャルの符号は上で用いた約束による)。これがポアソン方程式である。

練習:調和関数はどれか

次の平面の関数のうち、$\frac{\partial^2 V}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 V}{\partial y^2} = 0$ を満たすのはどれか。(a) $x^2 - y^2$、(b) $xy$、(c) $x^2 + y^2$。

(a) $2 + (-2) = 0$ で、調和関数である。(b) 二階導関数はどちらもゼロで、調和関数である。(c) $2 + 2 = 4 \neq 0$ で、調和関数ではない。はじめの二つは $(x+iy)^2 = x^2 - y^2 + 2ixy$ の実部と虚部である。これは偶然ではない。微分可能な複素関数の実部と虚部は、つねに調和関数になる。

練習:板の中心

上の図では、上の辺が 100、ほかの辺が 0 である。なぜ中心の温度はちょうど 25 に収束するのか。

四つの問題を考える。それぞれで違う一辺が 100、残りの三辺が 0 である。板を回せば四つは同じ問題だから、中心では同じ値を与える。四つの解を足すと、(線形性により)四辺とも 100 の場合の解、つまり定数 100 が得られる。したがって各問題の中心の値は $\frac{100}{4} = 25$ である。

出典: Pierre-Simon Laplace、「Théorie des attractions des sphéroïdes et de la figure des planètes」、Mémoires de l’Académie royale des sciences(1782、1785 年刊) · Pierre-Simon Laplace、「Mémoire sur la théorie de l’anneau de Saturne」、Mémoires de l’Académie royale des sciences(1787、1789 年刊) · Siméon-Denis Poisson、「Remarques sur une équation qui se présente dans la théorie des attractions des sphéroïdes」、Nouveau Bulletin de la Société philomatique 3(1813) · Oliver D. Kellogg、Foundations of Potential Theory(1929)。


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