絶対値 1 の複素数は平面を回す。ハミルトンは自分の数が空間で同じことをすると期待した。実際にそうなるのだが、そのやり方は彼がはじめに想像したより微妙だった。

手順

空間の点 $(x, y, z)$ を純四元数 $v = xi + yj + zk$ として書く。単位ベクトル $u = u_1 i + u_2 j + u_3 k$ で与えられる軸のまわりに角 $\theta$ だけ回すには、

$$q = \cos\frac{\theta}{2} + \sin\frac{\theta}{2}\,(u_1 i + u_2 j + u_3 k)$$

をとり、

$$v \;\longmapsto\; q\,v\,q^{-1}, \qquad q^{-1} = \cos\frac{\theta}{2} - \sin\frac{\theta}{2}\,(u_1 i + u_2 j + u_3 k)$$

を計算する。結果はふたたび純四元数で、それが回された点である。軸と角を選んでみよう。

二つのことが目につく。一つ目は半分の角である。$q$ は「サンドイッチ」$q v q^{-1}$ の中に二度現れ、それぞれの側が回転の半分ずつを受けもつ。二つ目はそこから出てくる。$\theta = 360°$ で物体はもとの位置に戻るが、$q = \cos 180° = -1$ となる。四元数 $q$ と $-q$ は同じ回転を与えるのだ。四元数のほうも出発点に戻るには、二回転が必要になる。この性質は一世紀後、電子のスピンに再び現れる。

合成は掛け算

まず $q_1$ で回し、次に $q_2$ で回すと、$q_2 (q_1 v q_1^{-1}) q_2^{-1} = (q_2 q_1)\,v\,(q_2 q_1)^{-1}$ となる。合成された回転は単に積 $q_2 q_1$ である。そして空間の回転は可換ではない(本を二つの異なる軸のまわりに半回転ずつ、二通りの順序で回して比べてみよう)のだから、四元数が可換でないのも自然なことだ。ハミルトンの同時代人をあれほど悩ませた欠点は、じつは長所なのである。

アポロから携帯電話まで

回転は、飛行機の機首方位、ピッチ、ロールのような三つの角で表すこともできる。だがこれらの角には欠点がある。ある姿勢では二つの軸が重なり、自由度が一つ失われる。いわゆるジンバルロックである。アポロ 11 号の航法装置には三つのジンバルがあり、この姿勢を避けなければならなかった。宇宙飛行士マイケル・コリンズは無線で、「クリスマスに四つ目のジンバルを」と冗談を言った。四元数にはこの問題がない。1985 年にケン・シューメイクが四元数を使って二つの回転のあいだをなめらかに補間する方法を示して以来、四元数はコンピュータ・アニメーション、ビデオゲーム、ロボット、宇宙船、そして携帯電話の姿勢センサーの標準になった。

練習:k のまわりの四分の一回転

点 $v = i$(点 $(1, 0, 0)$)を軸 $k$ のまわりに $90°$ 回せ。

$q = \cos 45° + \sin 45°\,k = \frac{1 + k}{\sqrt2}$、$q^{-1} = \frac{1 - k}{\sqrt2}$ である。すると $q\,i\,q^{-1} = \frac{(1 + k)\,i\,(1 - k)}{2} = \frac{(i + j)(1 - k)}{2} = \frac{i - ik + j - jk}{2} = \frac{i + j + j - i}{2} = j$。点 $(1, 0, 0)$ は $(0, 1, 0)$ に移った。四分の一回転である。

練習:二つの半回転

$i$ のまわりの半回転($180°$)は $q_1 = i$ に、$j$ のまわりの半回転は $q_2 = j$ に対応する。まず $i$、次に $j$ のまわりに回したときの合成はどんな回転か。

$q_2 q_1 = ji = -k = \cos 90° + \sin 90°\,(-k)$。これは軸 $-k$ のまわりの半回転で、$k$ のまわりの半回転と同じである。直交する二つの軸のまわりの半回転を続けると、三つ目の軸のまわりの半回転になる。

出典: Olinde Rodrigues, “Des lois géométriques qui régissent les déplacements d’un système solide dans l’espace”, Journal de Mathématiques Pures et Appliquées(1840)· Arthur Cayley, “On certain results relating to quaternions”, Philosophical Magazine(1845)· Simon L. Altmann, Rotations, Quaternions, and Double Groups(1986)· Ken Shoemake, “Animating rotation with quaternion curves”, SIGGRAPH(1985)。


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