四次元:見えないものを描く
この章の図にはすべて一つの利点があった。表す対象を、なんらかの仕方で紙の上に置けたことである。しかし数学は、四次元、十次元、百万次元の空間についても平然と語る。代数には何の困難もない。四次元空間の点とは、四つの数のリスト $(x,y,z,w)$ にすぎない。だが目は三次元に住んでいる。見えないものをどう描けばよいのか。
フラットランド
1884 年、ロンドンのある学校の校長エドウィン・アボットは、一つの正方形という筆名で『フラットランド』という小説を出版した。語り手は二次元の世界に住む正方形で、そこには三角形、正方形、五角形、円が住んでいる。住民に見えるのは線分だけである。横から見れば、どの多角形も一本の線なのだ。
ある日、一つの球がフラットランドにやってくる。正方形は、一つの点が現れ、円に育ち、また縮んで消えるのを見る。それは平面を通り抜ける球の切り口だった。彼は球が何なのか理解できなかったが、平面から連れ出され、自分の世界を上から見て、ようやく理解する。戻った彼は三次元について語ろうとし、異端の罪で投獄されてしまう。
アボットの教えは一つの方法である。類比によって推論することだ。私たちは球を前にしたあの正方形である。私たちの空間を通り抜ける四次元の物体は、大きくなってはまた小さくなる三次元の切り口の列として現れるだろう。その全体を見ることはできない。だが問うことはできる。一つ下の次元の住民には、それはどう見えるだろうか。
見ずに数える
数を使えば、類比はさらによく働く。各次元の「立方体」の列を見てみよう。
| 次元 | 対象 | 頂点 | 辺 |
|---|---|---|---|
| 0 | 点 | 1 | 0 |
| 1 | 線分 | 2 | 1 |
| 2 | 正方形 | 4 | 4 |
| 3 | 立方体 | 8 | 12 |
| 4 | 超立方体 | 16 | 32 |
ある次元から次の次元へ移るには、対象を一つ写し、各頂点をその写しと結べばよい。頂点の数は倍になる。$2^n$ である。辺の数は、もとの辺と写しの辺と新しい結び線を合わせたもの、$2E+V$ である。立方体から超立方体へは $2\cdot12+8=32$。超立方体の 32 本の辺を見た人は誰もいないが、この数え方は確かである。記号と推論は、目の届かないところまで届く。超立方体のもう一つの名前テッセラクト(tesseract)は、イギリスの数学者チャールズ・ハワード・ヒントンが 1888 年に作った言葉である。
超立方体の影
描けるのは影である。立方体の紙の上の影は、頂点どうしを結んだ二つの正方形だ。超立方体の私たちの空間での影は、頂点どうしを結んだ二つの立方体で、一方が他方の中に入っている。そしてその影の紙の上の影が、下の図である。
超立方体を $xw$ 平面の中で回してみよう。この平面は私たちの空間の一つの方向と四番目の方向を混ぜたもので、私たちにとっては存在しない。結果はありえないことのように見える。内側の立方体が大きくなり、外側の立方体が小さくなり、二つは互いを通り抜けて入れ替わる。フラットランドの住民にとっても、平面の外へ回る立方体は同じように裏返っていくように見えるだろう。この図が示しているのは超立方体そのものではなく、いまある目で私たちがそれについて知ることのできるものである。
練習:五次元の立方体
五次元の立方体には頂点と辺がいくつあるか。
頂点は $2^5=32$ 個。辺は、超立方体の辺を二回数え、さらに頂点ごとに一本の結び線を加えて $2\cdot32+16=80$ 本。一般に、$n$ 次元の立方体には $n\cdot2^{n-1}$ 本の辺がある。$n=5$ なら $5\cdot16=80$ である。
練習:フラットランドの球
半径 $5$ の球がフラットランドを通り抜ける。球の中心が平面から $3$ 単位離れているとき、正方形に見える円の半径はいくつか。
ピタゴラスの定理により、切り口の半径は $\sqrt{5^2-3^2}=\sqrt{16}=4$ である。中心が平面上にあるとき半径は $5$、平面から $5$ 単位離れると切り口は一点になる。正方形は、半径が $0$ から $5$ まで育ち、また $0$ に戻る円を見る。